司法アクセス・パラダイムの転換──求められる法的サーヴィスへ
第6回学術大会案内2012.pdf
1. 企画の狙い
司法制度改革の柱の一つとして実現した総合法律支援法の下で、日本司法支援センター(法テラス)の事業は既に6年を経過した。民事法律扶助、国選弁護という従来の事業を引き継ぐと共に、さらに情報提供、犯罪被害者支援、司法過疎への取組みなど、新たな業務を加えた「総合法律支援」はどこまで国民の司法アクセス・ニーズに応えることができているかを検証する時期が来ている。
21世紀を迎えて、法律扶助の先進国といわれた欧米では、法的援助への増大する需要と財政逼迫という二律背反的環境の中で、司法アクセスの質・量を確保しながらサーヴィスの効率化を図る試みが様々になされている。例えば、弁護士により提供されるサーヴィスの質的評価とそれに基づくサーヴィス提供者の絞込み、ITの活用によるDIYサーヴィスの導入、紛争の初期段階での情報提供及び助言の充実、裁判外紛争解決(ADR)の導入による裁判費用支出の抑制などが試みられている。このような、法律扶助先進国といわれる国々の動向は、国の制度としてははるかに遅れて出発した日本の制度運営にも影響を及ぼさずにはいられないだろう。
他方、2011年3月の東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故は、被災者の生活再建と地域再生のために司法セクターには何ができるか、を深刻に問い掛けている。
司法アクセスの問題は従来、法的援助を必要とする人々をどのようなルートで司法サーヴィス提供者に導くか、という形で論じられてきた。しかし今日問われているのは、司法サーヴィスのあるべき姿そのものであり、はたして司法サーヴィスは人々に生活上の支援と充足とを実質的・実効的に提供することができるのか、である。そこでは司法制度の運営に関わる機関、とりわけ法的サーヴィスの提供者である弁護士・司法書士が、公的制度としての総合法律支援に関わるあり方や、
「総合法律支援」として提供すべきサーヴィスの内容が問い直されてくる。
第6回目の学術大会を迎えるにあたり、司法アクセスのサプライ・セクターが求められている課題を見直し、改善の方向を検討したい。
2. 第6回学術大会の実施内容
- (1)日・時:2012年12月8日(土)午後1時~5時30分
- (2)於いて:弁護士会館
- (3)持ち方:司法アクセスが当面する課題について、これまで各方面で活躍されている方々
から報告を受け、討論を通じて問題のありかについて掘り下げる。 - (4)実施内容
テーマⅠ:総合法律支援の到達点と、残された課題
◇「総合法律支援の制度的課題」山本和彦氏(一橋大学教授)
◇「総合法律支援の6年―法テラスの直面する課題―」大川真郎氏(弁護士)
テーマⅡ:パブリック・リーガルサーヴィスの今後を探る
◇「離島・地域のニーズと司法アクセス」樫村志郎氏(神戸大学教授)
◇「地域コミュニティーの再建における法律専門家の役割―東日本大震災の被災地調査から」飯考行氏(弘前大学准教授)
◇「スタッフ弁護士モデルの再編と新たな任務」池永知樹氏(弁護士)
◇「パブリック・リーガルサーヴィスの担い手-行政訴訟を中心にー」馬場健一氏(神戸
大学教授)
3. プログラム
2012年12月8日(土):弁護士会館2階「クレオ」(東京都千代田区霞が関1-1-3)
- 1:00p.m. 開会会長挨拶
- 1:10p.m. テーマⅠ:総合法律支援の到達点と、残された課題
・1:10p.m.~1:45p.m.
総合法律支援の制度的課題(仮題)(山本和彦氏・一橋大学教授)
・1:45p.m.~2:20p.m.
総合法律支援の6年―法テラスの直面する課題―(大川真郎氏・弁護士、日本司法
支援センター理事)
・2:20p.m.~2:35p.m.
質疑・意見交換 - 2:35p.m.~2:55p.m. [休憩]
- 2:35p.m. テーマⅡ:パブリック・リーガルサーヴィスの今後を探る・2:55p.m.~3:25p.m.
離島・地域のニーズと司法アクセス(樫村志郎氏・神戸大学教授)
・3:25p.m.~3:55p.m.
地域コミュニティーの再建における法律専門家の役割―東日本大震災の被災地調査から(飯考行氏・弘前大学准教授)
・3:55p.m.~4:25p.m.
スタッフ弁護士モデルの再編と新たな任務(池永知樹氏・弁護士)
・4:25p.m.~4:55p.m.
パブリック・リーガルサーヴィスの担い手──行政訴訟を中心に──(馬場健一氏・神戸
大学教授)
・4:55p.m.~5:30p.m.
質疑・意見交換 - 5:30p.m. 閉会の辞
※ 大会終了後、懇親会を予定する(会費3,000円)(以上)